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まどの下のジョンちゃんと私のお話

私が幼稚園児のときに我が家に貰われてきた、シェパードとしば犬の雑種のジョンちゃん。
おんなの子なのに、祖父母の好みでおとこの子の名前をつけられました。

とにかく人が大好きで、庭の柵のなかから家族や知り合いの姿がすこしでも見えると、それはもう大騒ぎ!
柵を飛び越えるんじゃないかと思うような勢いでジャンプしながら存在をアピールします。

柵の横に掛けてあるリードを少しでもさわろうものなら、それはもう大暴れでよだれをふり飛ばしながらいろんな声で自分の興奮度合をMaxで伝えてきます。

暴れ狂うジョンちゃんの首輪をなんとかつかみ、リードを装着してさぁおさんぽ!

リードをくわえて力の限りさんぽ担当者を引っ張ります。
もちろんくわえたリードの横からたらたらよだれがじゅるるる・・・

小学生の低学年だった私はそんなジョンちゃんのおさんぽが大好きで、ひとりでもよく行きました。

でも、興奮しすぎたジョンちゃんの力は全身全霊で綱引きしている感じ。ちょっと油断するとすぐに体を持っていかれてしまいます。
過去に、2度ほど引っ張られて転んでケガをしたことも。
しかも、おもいっきり前にひっぱられるため、2度とも顔面からダイブ。
そして必死でリードを守るので引きずられること数メートル。
典型的’ひらたい顔’日本人の私の低い鼻のてっぺんは、見るも無残な状態に・・・。

小学校低学年ともなると、やっぱり見た目を気にします。
かさぶたになって、鼻のあたまが茶色くなった顔で学校にいくことの恥ずかしさは、40代後半になった今でも忘れられません。

そんなジョンちゃんもどんどんおばあちゃんになり、いつしか家族を見つけても存在をアピールするパワーがなくなり、伏せた体をから顔だけ少し動かして上目使いで弱い視線を向けるようになりました。

当時の私の部屋はジョンちゃんのおうちの横にあり、窓を開けるとすぐ下にジョンちゃんがいて、体を乗り出せば手が届きました。

どんどん元気がなくなってきたジョンちゃんが心配で、一日に何度も窓からのぞき、声を掛けるようになりました。
今でもそのぐったりしながらも私の声に反応してくれている姿は頭に残っています。

ある朝、祖母の「あらぁ、とうとう死んじゃったねぇ。」という声で目が覚めました。

目は覚めたものの、窓の下を見るのが怖い・・・というよりも、現実を認めたくなくていつまでたってもベッドから起き上がれず、天井を見つめたまま涙が止まらずそのまま数時間・・・

結婚して実家を出た今でもあの部屋の窓の下は今でもジョンちゃんの存在が強くて、いつでもあの頃に戻れる大切な場所です。